[知識] ホームレスが自立することを支援する「ビッグイシュー」とは?

[知識] ホームレスが自立することを支援する「ビッグイシュー」とは?

久しぶりにお弁当がなかった。こういうとき、会社の同期に声をかけて、お昼は外で食べたりする。今日は、そこで見た不思議な光景、そして自分の浅はかさを少し反省した日であった。

おじさんと通行人


photo credit: Alex E. Proimos On a Pole, Fifth Avenue via photopin (license)

僕は同期2人と、札幌駅の高架下にある居酒屋「アテニヨル」でお昼を食べることにした。アテニヨルは、以前このブログで紹介した、鯛茶漬けをリーズナブルに食べられるお店だ。

https://www.daikori.net/archives/2535

今回も鯛茶漬け…は同期のうちの1人が頼み、僕ともう1人は牛テールスープ茶漬けを頼んだ。

牛テールスープ茶漬けも大変美味しく、また紹介したいところなのだが、今日は一旦置いておきたい。というのも、窓の外を見ていたときに不思議な光景を見たからだ。

高架下、外に出るか出ないかの位置に立つ1人のおじさんがいた。ニット帽をかぶって、手には何かを持っている。

すると時折、通行人の誰かがおじさんの元に駆け寄り、二、三言会話をしたと思ったら、何かしらの金銭のやりとりを行ったではないか。

「これは怪しい」。直感的にまず、僕はそう思ってしまった。その後も何人かの人たちがおじさんに会い、そして何かを受け取って、おじさんにお金を渡していた。

おじさんは、受け取った小銭を丁寧にケースにしまい込むと、再び誰かを待つようにそこに立ち続けるのだった。

ビッグイシュー


photo credit: evolverphoto The Big Issue via photopin (license)

見知らぬおじさんに見知らぬ通行人。そして行われるやりとり。すべてが謎めいていて、僕はとても興味をそそられた。なんとか手がかりを見つけようと、注意深くその様子を店内から眺めていると、ふと、手に持っているものが雑誌であることがわかった。

雑誌には「ISSUE」という英単語が書かれていることが分かり、すぐにスマホで検索をしてみた。

ビッグイシュー」。僕はそのページを開き、そして理解した。

おじさんは高架下で怪しいやりとりをしていたわけではなかった。おじさんは、雑誌を売る仕事をしていたのだ。

ホームレスの自立を支援する

ビッグイシューはイギリス発祥のホームレス自立支援企業。元はイギリスの化粧品会社の創業者ゴードン・ロディックが、アメリカでホームレスのみが販売できる新聞「Street newspaper」の存在を知ったのが1991年。それをアイデアに、ロンドンでホームレスのみが販売できる雑誌「ビッグイシュー」を刊行し、成功を収めた。今では10カ国もの地域で販売がなされており、国際的なネットワークでつながっているとのことだ。

http://bigissue.com

日本ではビッグイシュー日本として、全国12の地域でボランティアやNPOらと手を組み、ビッグイシューの雑誌を販売している。

http://bigissue.jp/index.html

ただイギリス本国の雑誌を翻訳しているわけではなく、ちゃんと日本の視点で記事を執筆して販売しているようだ。

さて、この雑誌を売ることが、どのようにホームレスの自立を支援するのだろうか?

公式サイトの「販売のしくみ」のページを見ると、販売者はまず、最初の10冊を無料で仕入れることが出来る。これらをすべて売ると、販売者にとってそのまま3,500円の利益となる。

以降、雑誌は1冊あたり170円の仕入れ値となり、先ほどの3,500円を元手に雑誌を仕入れる。そしてそれが1冊売れると、180円が販売者の手元に入ることになる。

こうして仕入れと販売を繰り返して、販売者が利益を得ていくという仕組みだ。

販売者には行動規範があり、それを守れる人がビッグイシューを売ることが出来る。そうして利益を得て、ゆくゆくは自立していくということだろう。

一度読んでみたい


photo credit: 0olong Good news! Buy the Big Issue. via photopin (license)

初め、おじさんを怪しい人だと思った自分の浅はかさが恥ずかしくなった。こうした活動がここ札幌で行われていること全く知らなかったからだ。

その後、仕事が始まる時間が迫っていたため、残念ながらこの雑誌を手にすることはできなかったのだけど、今度また販売者の方を見かけたら、一度買って読んでみたいと思う。

なお、この雑誌はネット販売などはしておらず、所定の場所で販売者より購入するか、指定の図書館で読むことが出来る。足を運んで、販売者から購入するのが支援につながるようなので、きっと今日見た通行人の方々は、もとよりこれを目的として雑誌を購入したに違いない。

自分の知らないことが、まだまだたくさんあるんだなと思い知った一日だった。